町に残った者の役目

私が住んでいるのは、一晩で1メートルの雪が降るのは珍しくない豪雪地帯。
雪が積もる冬に生活するのは大変だが、夏はさほど気温が上がらず快適に過ごせる、しかし、快適に過ごせる期間は短く、進学を機に町を離れる者は少なくない。
私が住む家の屋根は金属屋根、周囲の家も同じ、瓦屋根より金属屋根のほうが積もった雪を落とし易い、落とし易いよう屋根は傾斜になっている。
屋根に積もった雪を落とすのは、その家の住人、屋根に積もった雪を落とせなくなったら、豪雪地帯には住めない。
積もった雪を落とさないと、雪の重りで屋根が潰れてしまう、もちろん、家の中に人がいれば軽いケガでは済まない。
屋根に積もった雪を落とすのだから、屋根に上るのは平気?そんなことはない。
冬は1階の屋根の高さくらいまで雪が積もるため、2階の屋根に上がっても恐れることはないのだが、雪が積もっていないと屋根に上るのは怖い、万が一、屋根から落ちたら病院行きは免れない。
湿度が高いと雪が降るのため、冬は塗装に適さない。
春になってもまだ雪が降る、梅雨や秋の長雨は塗装に適さないため、豪雪地帯で建物の塗装に適した期間は短い、その期間を逃すと翌年まで塗装が出来ない。
業者に頼んで塗装をするのは、屋根にソーラーパネルや太陽熱温水器が載っている比較的新しい家。
私の家は古く、屋根の塗装は私が行う。
屋根に上ると、アチコチで屋根の塗装が行われているが、足場を組まず屋根の塗装をしているのは、いずれも古い家。
「アンタのとこは良いね、自分で塗れるから」、これは褒め言葉ではない、お金がなく屋根の塗装を業者に頼めないことを意味している。
業者に頼まず住人自ら屋根を塗っているのは、町に残った者ばかり、これらの者は影で負け組と言われている。
今年も来年も冬には雪が降る、屋根の雪を落とすのは町に残った負け組の仕事。
雪下ろしや屋根の塗装をするのは自分の家だけではない、若者がいない家の分も行い、その時ばかりは町に残った者を負け組と呼ぶ者は1人もいない。
今年で私は60歳、町では若者の部類に入る。