頑固な祖父

頑固な祖父

私の実家は築100年以上が経つ古民家なのだが、屋根塗装をするのは今回が初めて、なぜなら、かつての屋根は塗装が必要ない瓦屋根だったから。
今でこそ様々な種類の屋根があるが、昔はどの家も瓦屋根が主流で、スレート屋根に変えると貧乏臭いとバカにされたらしい。
実家を建てたのは祖父の親、私からすれば曽祖父、写真でしか見たことがない。親戚の叔父さん達によると、曽祖父は祖父と性格がソックリだったらしく、かなりの頑固者。
祖父は今も健在、頑固な性格も健在。
古民家は見るのと住んでみるのとでは感じ方が違う、住んでみると夏は涼しいが、冬はメッチャ寒い、窓は締めていても隙間風がピューピュー入って来る。
快適な生活がしたい私は、実家の建て替えを望んでいるのだが、祖父がいるところで建て替えの話は許されない。

屋根瓦を現在主流のスレート屋根に変えると言い出したのは祖父、頑固者の祖父がどうして?
瓦屋根は塗装はしなくて良いのだが、重たい瓦を載せておくことは家にとっては負担、大きな地震が来たら太い柱で出来ている家も倒れてしまう。自宅が崩壊して住めなくなるよりは、貧乏臭いとバカにされても住み続けることを選び、スレート屋根に変える決断をしたのだろう。
スレート屋根は瓦屋根と同じ緑色、屋根なんて、そんなに見るものではないため、私や両親はスレート屋根に変わっても全然気にしていないのだが、スレート屋根を貧乏臭いと思い込んでいる祖父は、「雨音は煩くないか?」、「寒くないか?」、「瓦屋根のほうが良かっただろ」とやたらと同調を求めて来た。
スレート屋根を貧乏臭いと思っているのは、私の祖父だけ、近所の人も何とも思っていない。

今回、屋根に塗る塗料も前回と同じ緑色、祖父のために緑色にしたわけではない、私の家の古民家には緑色の屋根が似合っているから。
祖父は塗料なんてどれも同じだと思っているが、今回、屋根に塗る塗料は雨音が静かになる優れもの。
見た目は他の塗料と大して変わらない、若干ドロっとしているような気がする。
田舎ではイベントが少ないため、業者さんに屋根塗装をしてもらっていると、近所の人が様子を見に集まって来る。

近所の人が集まると、母親はお茶を出してもてなす、もちろん、塗装をしてくれる業者さんにもお茶を出す。その様子を、祖父は部屋の中から見ているだけで、出ては来ない。
母親、「お祖父ちゃんにも持ってって」
近所の人や業者さんに出すお茶菓子を祖父に持って行くと、孫の前では決して食べない頑固な祖父。

屋根の塗装が終わり業者さんが帰って行くと、家から祖父が出て来て、「今日は良い天気じゃな」。
空なんて見てないだろ、「屋根がキレイになったな」、と素直に言えば良いのに。

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