塗装では消えない祖父の思い

祖父が亡くなって1ヶ月も経ってないのに、家の外壁塗装をすることになった。
近所の人、「お婆さん、お爺さんのことで苦労したから、忘れるためにも家を外壁塗装するのよ」
確かに、晩年の祖父は認知が進み、何をするにも家族の助けが必要だった。
私、「お母さんは外壁塗装に賛成なの?」
母親、「お婆ちゃんがすることに反対なんて出来ないでしょ」
私、「お父さんは?」
父親、「・・・」
母親、「この人は、お爺ちゃんの思い出を残しておきたい人だから、出来ることなら外壁塗装はしたくないのよ」
祖父の思い出を残しておきたいのは、内孫である私も同じ。
家の外壁には、塗装が剥げて白くなっているところがあり、それは歩くのが困難な祖父が体を支えるのに触ったところ。

外壁塗装が始まる日
母親、「今日は外食するから早く帰って来なさい」
私、「どうして外食なの?」
母親、「お婆ちゃんが旅行に行っていないからよ」
外壁塗装で祖父の思い出が消えてしまうのに、旅行へ行くなんて、祖母は冷たいな。

学校から帰ると、業者さんが家を高圧洗浄で水洗いしていた。
水洗いで汚れは取れるのだが、祖父が触って塗装が剥げたところは、そのままの形で残っていたため
私、「お爺ちゃんが触ったところは残してくれるの?」
母親、「残すわけないでしょ」
母親にも冷たさを感じた。

夜、父親が仕事から帰って来ると、祖父が触って塗装が剥げたところを、父親は触った。
母親、「親子で同じことをしているわ」
私、「えっ!?」
母親、「お婆ちゃんも触ってたわよ」
祖母と父親は親子、父親と私も親子、私も祖父が触って塗装が剥げたところを触った。

数日後、旅行から祖母が帰って来た時には、祖父が触って塗装が剥げたところは、下塗り塗料が塗られ分からなくなっていた。
私、「お婆ちゃん、おかえり。旅行は楽しかった?」
祖母、「楽しかったよ、ねえ、爺さん」
祖母が旅行に行ったのは、祖母と祖父が新婚旅行で行ったところ。

上塗り塗装が終わると
祖母、「爺さん、家がキレイになって良かったな」
祖母は冷たい人ではなかった、亡くなっても祖父と常に一緒にいる。

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