定年退職して楽しかったのは最初の1週間だけ、要職に付いていた私が退職をしても、会社には何ら支障が出ていない。 家で退屈にしている私に 妻、「犬でも飼う？」 私、「犬のほうが長生きしたら、どうするの？」 妻は否定しなかった。 健康のために始めたのがウォーキング。 ウォーキングで話し掛けられるのは妻ばかり、仕事しかして来なかった私に近所で知り合いはいない。 妻、「Ａさんの家、外壁塗装をしているんだって」 私、「そんなことを話してたの？」 妻、「うん」 ウォーキングを続けていると 妻、「あれよ、Ａさんの家」 私、「さっき話してた外壁塗装をしているお宅のこと？」 妻、「うん」 妻に言われ、外壁塗装をしているお宅に近づくと、妻の知り合いが井戸端会議をしていた。 私、「先に帰ってるよ」 妻、「うん」 妻は井戸端会議に参加し、私は家に帰ろうとすると、同年代と思われる男性に会釈された。 私が家に帰って30分後、妻が帰って来た。 妻、「ただいま」 私、「おかえり」 妻、「Ｂさんの御主人に挨拶した？」 私、「Ｂさんって誰？」 妻、「井戸端会議にいた人よ」 私、「あー、会釈をした人ね。それがどうかしたの？」 妻、「Ｂさんのところも外壁塗装をすることになったの」 私、「へー」 数日後、いつも通り妻とウォーキングをしていると、前から来たのは2人組の男、そのうちの1人は私に会釈をしてくれたＢさんだった。 私、「この前はスイマセン、気付かなくって」 Ｂさん、「いいえいいえ」 私、「外壁塗装をするらしいですね？」 Ｂさん、「そのことでレクチャーを受けているのです」 Ｂさんと一緒にいたのは、先に家の外壁塗装をしているＡさん。 妻、「先に帰ってるね」 私、「うん」 同年代の男達と一緒に歩くのは定年退職してからは初めてのことで、現役当時の雰囲気を思い出した。 私、「外壁塗装はどうですか？」 Ａさん、「何をするわけではないけど、家に人が出入りするのは良いことだよ」 Ｂさん、「それ分かります」 私、「私も分かります」 我が家も外壁塗装をすることにした。 外壁塗装の初日 妻、「何処かへ行くの？」 私、「何処にも行かないよ」 妻、「どうしてネクタイをしているの？」 私、「塗装屋さんが来るからだよ」 外壁塗装の2日目 私、「何処かへ行くの？」 妻、「何処にも行かないわよ」 妻、「どうしてメイクをしているの？」 私、「塗装屋さんが来るからよ」 外壁塗装でキレイになったのは、家だけじゃない。